野生のクラゲたち
フィールドワークで出会った、ありのままのクラゲたちの姿です。
スナイロクラゲ
スナイロクラゲとビゼンクラゲは元々は別種と考えられてましたが、同種の色違いだということが判明しました。今もどちらの名前も残っており、しばしばクラゲ初心者を混乱させています。ちなみに、ビゼンクラゲは高級クラゲで、食用として最も需要が高いです。画像の個体は、2023年に浜名湖にて撮影。この年も大量に発生していて、湖畔に大量に打ち上がっていました。
アカクラゲ
別名「ハクションクラゲ」。その昔、忍者たちはアカクラゲを乾燥させた粉末をくしゃみを出させる道具として使用していたことからこの名前がつきました。海水浴場にもいるクラゲで、刺されるとかなり痛いので要注意。画像の個体は鳥取県の境港の港にて撮影。立派な口腕が素敵です。
ミズクラゲの仲間(Aurelia sp.)
いわゆる「クラゲ」で、日本近海ではどこでも一般に見られます。Aurelia属で水族館などでよく見られる種類は大体4-5種類ほどいますが、よーく見ないと見分けは筆者にも困難です。画像のものは生殖巣の形から日本のもの(Aurelia coerulea)とは別種だと思われますが、どの種かは不明。こちらの画像はデンマークのSvendborgという港町で撮影。見事に大量発生中で、海面をクラゲが覆っていました。
ミズクラゲの仲間(Aurelia sp.)
同じ場所の写真を使うな!と思いましたね。実はこれはトルコのイスタンブールで撮影したものです。ミズクラゲの仲間は時期と場所が合えば大体どこでも見つかります。ちなみにクラゲにも雌雄があり、ミズクラゲの雌雄は比較的見分けやすいです。口の周りがもふもふしているのが雌です。
クラゲの生活史
クラゲは、ポリプと呼ばれるイソギンチャクのような形から、私たちがよく知る形へと姿を変えます。その不思議な一生を記録しました。
抱卵個体
「クラゲの一生ってどうなってるんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?ここからは、自力で飼育して撮影したミズクラゲの生活環の全ステージの画像をお届けします。
成熟して受精卵を抱えているメスのミズクラゲの様子です。このようにバラのような保育嚢をもち、そこに茶色い受精卵を抱えています。
プラヌラ幼生
プラヌラ幼生は受精卵が発達したもので、繊毛がついていて泳ぎ回ります。気に入ったところに着底すると変態が開始し、次のポリプ世代へ移ります。運よく自然界から採取できた時には心の中でガッツポーズをしました。採取するには、一つ前の画像のように成熟した雌を探し、口の周りに抱えている受精卵をスポイトで拝借します。
ポリプ
「クラゲ」と言うとふよふよと泳ぐ姿を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はこのように底にくっついて生活している期間の方が長いのです。ポリプは無性生殖を行い、環境さえ整っていればポコポコと自分のクローンを増やしまくります。歩いたり、びっくりすると縮んだりして可愛いです。実体顕微鏡下で餌を与えると口を開けて食べる様子が観察できてこれまた可愛いです。付着生物として養殖関係者からは疎まれています。
餌のブラインシュリンプを捉えるポリプ
実体顕微鏡下で撮影。ポリプからメデューサ(成体)になるまで、餌はブラインシュリンプという小さなえびを食べます。泳ぐブラインシュリンプが触手に触れると捕らえて口に運ぶのですが、こちらのポリプは少々欲張りすぎな気が。。バイキングでは食べられる分だけ取ろうね!
ストロビラ
水温が5度以上低下したり、インドメタシン物質が水に入ったりするとストロビラに変態します。このように小さなクラゲの赤ちゃんが何枚も重なったような状態と、赤茶色へと変色するのが特徴です。1つの個体から多いと20匹ほどのクラゲの赤ちゃんが遊離するため、すごい繁殖力です。
ストロビレーション中の様子
赤茶色っぽいものがストロビラ、お花のような形をしているのがエフィラです。ストロビラへの変態からエフィラが遊離するまでの一連の流れをストロビレーションといい、筆者はこれにとんでもないロマンを感じてしまって研究対象としています。じっとしているストロビラから、エフィラが一生懸命拍動して遊離する姿を見ていると感動してしまいます。
エフィラ
ストロビラから遊離したエフィラは浮遊生活を始め、どんどん色が透明になっていき、皆さんがイメージするようなクラゲに育ちます。遊離したばかりのエフィラは拍動のリズムが早く、ぴこぴこと動いて泳ぎ回る姿がなんとも可愛らしいです。画像のエフィラは放射数が多い奇形です。通常は8放射ですが、最初に遊離したものや最後に遊離したもの、インドメタシンにより誘発されたストロビレーションでは奇形が多い気がします。浮遊生活を始めると無性生殖は行わず、代わりに有性生殖へと切り替わります。
メテフィラ
エフィラが大きくなると、どんどん透明に、また立体的になります。成体までは育っていない子供のクラゲをメテフィラと呼びます。日に日に大きく透明になっていくメテフィラを見ていると、感慨深い気持ちになってしまいます。
メデューサ(成体)
クラゲの成体をメデューサと呼びます。いわゆる「クラゲ」がこの姿です。この姿になるまでに、実はこれだけ多様な姿を経て育っています。この姿になって性成熟すると雌は卵を、雄は精子を放出し受精卵となり、発達してプラヌラ幼生になります。メデューサになった後の寿命はミズクラゲはおよそ1年で、基本的には冬を越さずに死んでいきます。稀に冬に泳いでいる個体は越冬個体で、大ぶりなことが多いです。